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米国シカゴで感じた「助け合い」の精神【Cheiron-GIFTS 2020採択者インタビュー①】

更新日:2021年2月15日

Cheiron-GIFTS 2020で第1位に採択された高田望・千明夫妻に、海外での生活や助成金の活用について話を聞いた。

「このアメリカ社会は助け合い、つまり困っている人が助けを受けられるシステムで出来上がっていることを知りました」と、ノースウェスタン大学で臓器発生・再生の原理解明に取り組む望さんは話す。シカゴにはさまざまな人種、経済状況、社会状況の人々が暮らしている。寒さの厳しい冬には、経済的に困窮した人々に衣料や温かい食料などがボランティア活動によって提供される。これは「困ったときはみんなでシェアしよう」という考え方だ。難病と闘う家族を応援するボランティアやチャリティーイベントに積極的に参加する望さんは、シカゴで暮らし、社会のいろいろなシステムが“横の繋がりであるシェアの精神”で成り立っていることに気付いた。


自分のスキルを役立てたい

 日本の看護師資格をもつ高田千明さんは、アメリカの看護師資格を取得して社会に貢献したいと考えている。Cheiron-GIFTSは、この資格取得のための学費に使う予定だ。千明さんが日本の病院で働いていたころ、アメリカで看護師として活躍し、一時帰国した同僚のセミナーで大きな刺激を受け、実際にアメリカに来て自分も医療従事者として市民を救う事に挑戦したいと考えた。


 誰でもよくある事だが、渡米したとき、言葉にはやはり不安を感じた。語学のレッスンには「助けを受けられる」システムを活用した。英語を第二外国語とする人々に、複数の機関から無料の学習機会が提供されているのだ。千明さんはこれを利用して実用的な英語を学び、日常生活で不自由のないレベルに上達できた。高いコミュニケーションスキルを必要とする看護師を目指し、合間に大学病院でボランティア、外国人への日本語授業、また保育園で働いたりしながら日々努力を重ねている。


海外での出産・育児

 コミュニケーションスキルについては、子どもの成長でも実感した。3歳になるお子さんは、Cheiron-GIFTSを活用して保育園に通っている。当初は千明さんの学業集中のために選んだ通園だったが、日本語しか使わなかったお子さんも、保育園の他の子どもたちとのコミュニケーションは英語。望さんは「保育園に行くようになって、言葉とコミュニケーションスキルはみるみる上達しています」と驚いている。


 夫婦で海外に留学する場合の出産・育児は、誰もが不安を感じることだろう。高田夫妻の場合、そんな不安を解消するのも「助けを受けられる」システムだった。「在シカゴ日本国

総領事館には現地日本人のために情報交換の場があります。また市の教会や図書館では、子どもに『絵本の読み聞かせ』をするイベントなどもあり、ママ友のネットワーキングも含めて非常に助かりました」と千明さんは話す。


 アメリカでは出産の数週間ほど前になると、Baby Showerというホームパーティーを開く。高田さんも出産直前の大きなお腹で苦労しつつも、多くの友人や知人を招き、集まった人々が生まれてくる子供の誕生を祝ってくれ、素晴らしい思い出になっている。高田夫妻の想いは、『息子には多国籍の友達と共に、多言語を始めアメリカの文化も一緒に学んで欲しい』と話す。


「シェア」で育てる研究や社会

 シカゴでの生命科学研究は「いろいろな人の意見を幅広く取り入れ、成果・成功までの過程を一気に加速させる機会をよく目撃します」と望さんは言う。例えば、著名な研究者のセミナーの後、講演者も交えて参加者はランチを取ることが習わし。フォーマルな講演とは一変して、カジュアルに自由なテーマで議論し、その場で新しいアイデアが生まれる事は日常。「日本でそういう機会は、私がいた頃はまずなかったと感じます。この米国での経験は刺激的でした」と話す。


 望さんは「留学先には二つ日本人の科学コミュニティー(*NUJRA/JRCC)があり、研究関連情報のシェアや特別研究セミナー運営など、さまざまなサポートをしています。また市民に無料教育を提供するシカゴで最も古い語学学校Literacy Chicagoの運営に準理事として携わっています。同じ地に留学した同志の力を頼り充実した留学生活を送って欲しい」と留学を考えている人々にメッセージを送る。渡航前でも、留学先の情報やビザの申請、生活面において可能な限り相談に応じるとのことだ。


 シカゴで感じた「困っている人を助ける」という精神は、望さんにもしっかり根付き、現地の日本人研究者や家族をサポートしたり、日本へ留学しようとしている米国研究者に日本語を教えたりもしている。アメリカ社会を支える「助け合いの精神」は、物だけでなく、考え方もシェアすることで、新しいものを作り上げる。そう感じながら、COVID-19パンデミック禍でありながら、家族三人で充実した留学生活を過ごしている。


*参考

ノースウェスタン大学日本人研究者の会 (NUJRA)幹事 (https://nujra2020.wixsite.com/home)

Japanese Researchers Crossing in Chicago (JRCC) 代表 (http://jrc-c.blogspot.com/)

Literacy Chicago(準理事)( https://www.literacychicago.org/)



記事執筆:

法政大学 経済学部 物理学・科学ジャーナリズム研究室 藤田 貢崇




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