言語ネットワークを専門とする研究者に帯同し、主夫として小学生の子供3人と過ごす消化器内科医のキャリア継続支援と子供達の教育支援
菅野 彩
脳神経外科医の私は、消化器内科医の夫と子供(6、8、10歳)を連れて渡米しました。小学生の午前授業や早退等を考慮し主夫という形を取りましたが、大学規定で帯同者として海外へ向かう場合は研究員として籍を残せず、退職し研究も中断せざるを得ませんでした。現在夫はESL(英語教室)に通い、授業で医療問題が扱われる際に医師としての見解を求められたことで、次第に滞在意義を見出すようになりました。また、各種WebセミナーやPodcastを受講し、米国医師国家試験を解き合いキャリア維持に努めています。帰国後、夫は日本で国際学会主幹予定の為、米国消化器関連学会に参加し、最新知識と質疑応答のノウハウを培う必要があります。更に、2ヶ月半の夏休みは、子供達の“自発的な英語表出”の機会と両親の研鑽時間確保が課題となりますが、3人がサマースクールを受講できれば両者を創出できると考えています。
夫婦共に勤務医の日本では、家族全員が揃う事の方が稀でした。米国では小学生の留守番が違法となりうるため、必ず一緒に行動する必要がありますが、データ解析研究は時間的な融通が利きやすく、記憶が残る年齢の子供達と家族で過ごせる絶好の機会です。また、親族等の助けが得られない環境は自助公助の精神を育み、三兄弟各々が家事の一翼を担えるようになりました。島国育ちでは味わえない言語、文化、制度、環境の違いに遭遇し、家族一丸となってピンチをチャンスに変える経験が、全員にとって多様性の理解や対応力の向上につながることを理想としています。
自分自身、浪人経験や産育休を経て、青壮年期に帰属を失うことはアイデンティティ喪失にもつながりかねないということを痛感しています。所属がない帯同者の立場では、前向きに活動したくても申請できる術はまずなく、本助成金制度は画期的な取り組みだと思います。研究者のみならず、帯同家族もそれぞれの立場で自己実現を果たせるよう、今後もこのサポートが継続されることを願っております。
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